空に風が満ちていた頃

天のその頂に輝く光の園があった

ディーロッテはひとつの歌、小さな小さな物語

緑深きバイダルト

静かな湖畔の宮殿で物語の幕を上げよう

ディーロッテを紹介しよう

バイダルトの姫ミルメリエ後にディーロッテの母

湖の宮殿に暮らしていた

緑深きバイダルト軸より遠き小国ののどかな湖畔の宮殿で

やがてミルメリエは恋に落ち

一人の赤子を産み落とす

小さな歌のディーロッテ

門を開く鍵を持つ大公ラナトの姫となる

空を渦巻く争いの音

天の帝は病に倒れ

父は戦で空に散る

軸から遠きバイダルト

緑深き湖の水面に映すは天上の戦火

されど平穏なる水面

母は庭園にて空を見上げ

遙かな天頂 幾艘もの船が光を散らし

そのしずくを小さく、ほんのかすかに 照らしていた

大公ラナトの弟クリアナン

兄亡き後の門を守り

長き時を経て

ルースのバリアストが戦を収めた

ラナトの娘のディーロッテ

美しい少女へと育っていた

まだ見ぬ許嫁はシンガミト マーリアの王子なり

空を見上げ 帰らぬ父待つディーロッテ

天に抱かれ白き鳥が少女の心を射抜かん

緑深きバイダルト

空舞う翼はローダイン

ディーロッテは歌を唄う

小さなひとつの恋の歌

ローダインは少女にほほえみ二人はつかの間空をかける

遙か高みに光の国

風駆け抜ける空の道

天を支える軸を越え

そして二人は舞い戻る

緑深きバイダルトのどかな湖畔の宮殿に

ローダイン 白き衣のシンガミト

ディーロッテはほほえみマーリアに旅立った

空を満たした風が凪ぎ

人が大地に降りてなお

歌い継がれる歌がある

ひとつの歌のディーロッテ

小さな小さな物語