プシュケの涙 (電撃文庫)

柴村仁 イラスト 也

 

 夏期講習中にクラスメイト吉野彼方の自殺を目撃した少年が前半の主人公。彼はある日同じ学年の“変人”由良に声をかけられクラスメイトの自殺を調査することになります。

 前後2編で構成された本作は、前編終盤に物語が一気に加速し由良が探す吉野彼方の自殺の真相が明らかになる課程で読者の心をギシギシと締め付けます。なんてこった。

 後編は穏やかに流れる物語。これだけならハッピーエンドの希望に満ちた解放の物語といえるでしょう。しかしこの構成にすることで明るい方向に走っている物語なのに読者の心をさらに締め付けます。

 章の変わり目のみに挿入される挿画も良い味出している上に読み終わって見返すとまたすばらしい効果で登場人物の孤独を描きあげていることが実感できます。

 何というか誰か助けてあげなよ。ってかんじなんですが、残念ながら手を差し出せる人物も登場しませんし、差し出された手をつかめなかったのが悲劇の原因だと思うんですよ。吉野彼方の性質に問題というか原因の一端があったのは事実だろうな。

 なかなか読みが乗るまでに時間がかかり一時的に積ん読本とかしていたのですが読み進めていけば一気に。というのはいつものパターンでしょうかね。

 いわゆるバッドエンドなんでしょうし希望をくじいた形の物語になっています。でもそれが魅力だからしょうがないんでしょうね。前半の主人公と由良、それぞれの喪失感が何というかとんがっています。

 後半特に日常ものの皮をかぶったこの化け物の姿をとくとごらんいただきたい。