ブログをHugoにしてから半年近く経ってしまった。
とは言え、最近そんなに書いていなかったのでブログエンジンの変更はそんなに影響が大きくないと思う。

さて、劇場公開中の映画、「さよならの朝に約束の花をかざろう」を観てきました。
脚本家の岡田麿里氏の初監督作品。もちろん脚本も岡田麿里。

公開から1週間以上たって観たため、パンフレットは売り切れでした。
公開館自体がそんなに多くないですしね。円盤に同封されるといいですね。

素晴らしい映画でした。本当に。スタッフロールの直前なんて拍手したくなってくらい。
久々にすごい映画を観たなという感想です。もちろん、最近みたキングスマンゴールデンサークルもグレイテスト・ショーマンも大変面白いし盛り上がる映画です。まあ、そういうのとはちょっとベクトルが違うというか。
最近流行りの言葉でいうと、尊い、って言うんでしょうかね。
キャラクター原案の吉田明彦氏のキャラクターも実にマッチしていて良いですね。
以下、感想。ネタバレあり

風景

イオルフ

ルパン三世のカリオストロを思い出させる水と石柱の隠れ里。
山の上の方にあるようですが、イオルフの人たちは結構薄着で服のまま泳いだり、夜中に防寒着も着ないで出歩いているので結構あったかそうだなと感じました。
里の家のリゾートホテルのようなレイアウトも手伝っています。

ヘルム農場

田舎町。穀倉地帯みたいですね。麦的なものを育てています。
川に架かる橋の形が機織り機みたいで特徴的でした。おそらく橋を上げるための仕掛けではないかと思いますが、機織り機みたいな形って方が背景として重要なのかも。

メザーテ

都の風景は何と無くですがストックホルムに似ていました。
海沿いの王宮、二つの橋、坂道。 
橋の長さは違いますが、パレードのレナトを襲撃する橋はストックホルムの王宮前の橋に雰囲気が似ていて好きです。
レイリアを助けるために潜むイオルフの一行。スパイ物みたいですね。トレイラーの国旗を切り裂いて落下してくるシーンはここです。
簪を抜いてお腹に当てるレイリアの表情は乱れたかみと合間ってとても素晴らしい。
ロケーションの話してないですね。

ドレイル

スチームパンク風情景を楽しめるドレイルの街。大砲を量産する鉄工関係の街であることから、蒸気機関の煙ではなく、溶鉱炉の煙突なのでしょうけれど。
町中に立ち並ぶ煙突と超巨大な水車は圧巻で、一気にファンタジーの世界に連れていってくれます。
幻想的だけれど、世界中探せばどっかにはありそうなイオルフ、割とリアリティ高めな農場と都ときて一気にフィクショナルな所に戻ってきた感じです。
ソーシャルゲーム、グランブルーファンタジーのバルツが私の中では近いロケーションかなと。
私はドレイル時代のマキアの衣装がかなり好きです。エンディングもいいですけど。

全般的に坂のシーンというか高低差のあるロケーションが印象的な映画でした。おそらく演出上の都合というか、心理状態との兼ね合いからの需要もあるのでしょうが。イオルフは山の上にあるようですし、メキアと長老様の家も傾斜に張り付くように作られています。また、序盤でレイリアの飛び込みの印象も大きいですね。イオルフから野盗に襲われた集落とくだりたどり着いたヘルム農場もまた山間の町外れみたいな位置にあります。メキアとエリアルが暮らす家は坂の上にあるようなカメラアングルで写りますし、犬を埋葬するシーンもお墓を掘る丘と谷の高低差が大きく描かれます。
メザーテの都は海沿いのため、比較的高低差の少ない場所のようですが、終盤の戦争のシーンで示されるように、周囲は山に囲まれおります。この街で印象的な高低差は、襲撃に失敗した後、メキアがエリアルを連れて土手を歩くシーン。背景に王宮(作り的に寺院にも見える)が写ります。結構土手が高いところにありそうな絵でした。また、レナトに乗ったレイリアや路地に垂れ下がる旗も演出として高さを使ってますね。
ドレイルでは街は斜面に沿って作られており、おそらくその位置エネルギーが水車を回してなんらかの動力源になっています。エリアルがラングに内心を打ち明ける場面に遭遇してしまったマキアが階段を降りてゆくのも印象的ですね。そういやそもそもマキアが働く食堂は入り口入ると降り階段で、奥には二階席、その下には厨房と結構入り組んだ構成になっていますし、彼女のクラス部屋もおそらく二階です。
兵隊になったエリアルと戦争と出産、クライマックスのメザーテではエリアルが住む郊外の一軒家と市街地の対比、山側から侵攻する敵軍との戦いなどなど、地形を生かした絵作りが豊富かなと。

魔女集会

戦争が終わってエリアルを置いてマキアが池を歩いて去るシーンで、こいつは魔女集会で会いましょう、か〜。とか思いました。星界の戦旗とかも同じような寿命の違いを描いてますけど、恋人みたいな関係で描く作品が多い中、お母ちゃんってのは面白いですよね。
本作はロリババアものの亜種とも言えますが、物語開始時点でルキアは15歳です。まあ子供を産めない年齢ではないものの、ばばあと言うには若いですよね。クライマックスの戦争の時点でも36歳ですし。
劇中でも犬が老衰でなくなりましたが、自分より後からきた、子供みたいな存在が自分を追い越していくって、犬猫飼っている人なら割とよくある事ですよね。猫の場合、途中で外見の成長が止まって見えるのは向こうですけど。犬猫が人語を話さないことでというか、根本的に考え方の異なる生き物であることは寿命の違う種族同士で暮らす上では良い方向に機能しているのかもね。

レイリアがジャンプした時に靴が脱げるのが、現世からの決別をあらわしてそうです。イオフルでは靴を履いてないですし、靴は俗世や拘束のシンボルかも。

イオルフの混血と郷の再建について

エンディングテーマとスタッフロールが終わると再建されたイオルフと思しき一枚絵が表示されます。希望を感じさせるいい演出ですね。レナトも写っているので実は過去でした、みたいなひねくれた見方はしなくてもいいかな。
都にいたイオルフのレジスタンスたちはイゾルたちによる迎撃され、殺されました。ただまあ、冒頭の進行で全員が死んだわけではないだろうし、レジスタンスに従事しなかった人もいるだろうから、ヒビオルにメッセージを込めて再建したのかな、という感じですかね。
ただ、映画を観た直後には、マキアとレイリアだけでどうやって再建するんだ?みたいなことも思いました。これについて、レイリアの娘メドメル王女は混血ですがイオルフの特性を遺伝しなかったと劇中で言われています。一方、ヒビオル商人のバロウも混血ですが、終盤までほとんど歳をとっていないようです。となると、イオルフの特性はひょっとして完全に受け継がれるか、そうでないかみたいなものなのかな?という風に考える事もできます。血は薄まるけど、長寿の一族は残るみたいな。
エンディングカードで肌の色が暗い子供がいるように見えたので郷の再建にあたって混血も行われたのかな?みたいな事も思いました。